米農家の娘xキッチンカーのストーリー。丸山優妃さんのお話。

清里に関わる人たちに取材を重ねて、「清里のやさしさ」の実態に迫っていこうという連載記事、「清里の”人”」。今回は清里区内で米農家として活躍しつつ、米粉を使ったオムレットをキッチンカーで販売する「お米カフェ 結 -musubi-」の事業も行っている丸山優妃さんにスポットを当てました。
普通はそのふわふわのスポンジ生地に小麦粉を使うオムレット。丸山さんのオムレットは小麦粉ではなく、なんと米粉を使用!そのあたりのストーリー、そしてお父さんの思いも含めてお話をうかがってきました。
実家のお米を活かしたいという思いから米粉のオムレットが誕生。
「こどもの頃から農作業をしている両親を見てて、『しんどそうだな』っていうイメージがあったのが正直なところです。米作りを継ぐつもりはなかったし、こどもの頃の夢は女の子らしく『ケーキ屋さん』でした(笑)」
ほがらかに話す優妃さん。大学を卒業してからは新潟市の食品会社に就職、いったん農業と離れた生活を送ります。
「それでも実家の農作業の手伝いはちょこちょこしていたんです。そうこうしているうちに社会人になって3年くらいが経ち、実家のお米を活かして、何か自分で事業を始められないかなと。ここ清里に戻ってきて、農作業を手伝いながらいろいろ自分にできることを考えました。お米なら、ということで最初はおにぎりカフェを考えたのですが、衛生関係など諸々を考えるとちょっとハードルが高いなと。そこで、趣味でもあるお菓子作りと結びつけようと試行錯誤した中で米粉を使ったオムレットがぴったりとハマって、これだ!と。キッチンカーであればそれほど大きな投資にもならないし、まずは始めてみようと」

優妃さんのオムレット。オムレットらしいふわっふわもっちもちの食感はそのままにグルテンフリーの優しい味わいは米粉ならでは。

この日は浄興寺の縁日での出店。常連のみなさんとコミュニケーションを取りながら手際よくオムレットが仕上がっていきます。
一度離れた実家に戻って感じた、地域で生きるということとふるさとということ。
キッチンカーのデビュー戦はビュー経ヶ岳でのイベント。そこからはオムレットの美味しさが評判を集め、「農家の娘のキッチンカー」というキャッチーさも手伝い、メディアの取材も重なっていろいろなイベントにひっぱりだこに。平日は農作業、土日はキッチンカーというルーティンで忙しい日々を過ごしている優妃さん。家業の継承に対しての思いを聞くとこんな答えが。
「うーん、なんとかいうか、これ!という強い思いがあるわけではなく。会社員を辞めて実家に戻ってきた時に『帰ってきていいよ』と優しく受け入れてくれた時に、地域で生きること、集落で生きること、そこの土地にいる意味みたいなものをぼんやりながら感じたというか。今は上越市内の別の場所に住んでいるのですが、この清里がふるさとという意識はやっぱり当たり前に持っていますよね。田んぼがあるから家族が生きていける、というか」

今では大型のトラクターもお手のもの。「慣れるまでは父親の手解きを受けながら動かしていました(優妃さん)」

家族での苗並べ。和気藹々として笑顔が絶えないその様子は農作業というよりは家族行事のような空気感です。
ゆくゆくはキッチンカーの事業も法人化できたりしたらいいかな、と話す優妃さん。結果としてこどもの頃の『ケーキ屋さん』という夢は(ある意味)理想的な形で叶ったように思えます。周囲の人たちと優しくつながりつつ、この地での米農家の在り方の新しい形を自分らしく築き上げていくことでしょう。

おわりに:父の思いと娘の思い。お父さんに話を聞いてみました。
と、前項までで優妃さんのインタビューは終了。取材当日、お父さんにもお話をうかがいました。

優妃さんがいないところでこっそりと、娘さんの就農についての思いを聞いてみました。
-優妃さんがご実家に帰ってきて、農業を継ぐと言った時はどんな思いで受け止めましたか?
「そうだね、まず実家に戻ってきた時には素直にうれしいという気持ちがあったかな。親元を離れたら普通はもうそれで一緒に一つ屋根の下で暮らす機会ってなくなっちゃうから。そこをまたもう一度、一緒に過ごす時間が持てたというのはうれしいことだよね」
-なるほど、では農業を継ぐということについては?
「娘だけではなく息子たち(優妃さんは兄・弟の3人きょうだい)にも、後を継いでくれと強いたことはなくて、それぞれが自分らしく生きていってくれればいいかなと思っていました。でも、娘が小さい時に「お父さんの後を継いで米作りをしてね」という話をしたことがあって。どんな流れの話だったかぜんぜん覚えていないし、ただの雑談というか、言葉のあやでそんな話をしたことが断片的だけど妙に記憶に残っていて。そんなことを思い出して感慨深い気持ちにはなりますよね」
と、そんなお話をお父様からおうかがいしたのですが、実は子どもの頃の「米作りの後を継ぐ話」、優妃さんもまったく同じエピソードを子どもの頃の思い出として話していました。取材時にはご家族で田植えの準備を行う様子も拝見したのですが、家族仲良くわきあいあいと、まるでひとつの家族行事かのように農作業を行なっている姿は、自然体でありながらしっかりと心が通じ合ってるからこそのもの。「地域でもお父さんのいい噂しか聞かないんです、ほんとに」とぽろっと話してくださった優妃さん。丸山家の真ん中に田んぼがあり、それぞれをつなぐものとして、ただの圃場ではとどまらない輝きがそこにはあるのでしょう。
【お米カフェ結-musubi- Instagramアカウント】
https://www.instagram.com/okomecafe.musubi/
