清里のひと

農村での新たなシゴトの選択肢、福保さんの鍼灸院。

清里に関わる人たちに取材を重ねて、「清里のやさしさ」の実態に迫っていこうという連載記事、「清里の”人”」。

今回は鍼灸院の「はり・きゅう蓋世堂(かいせいどう)」を区内で営む福保智成さん(32歳)にスポットを当ててみました。今年で開業から4年目を迎え、地域の皆さんに愛される鍼灸院として成長してきました。蓋世堂。農村である清里区の中で農業ではない方法でUターン起業を果たし、地域に新たな可能性を示した福保さんのストーリーを見てみましょう。

 

自身の心身の不調、そこからの回復をきっかけに鍼灸の道へ。

「学生時代はまさか鍼灸院で起業するとは夢にも思っていませんでした。両親が教員だったこともあり、自分も教員を目指していたんです」と意外なところから話を始めてくれた福保さん。

「結構遠回りしましたよ(笑)。大学にはどうもなじめず2年で中退。アルバイトをしたり、十日町のおばあさんの家で畑仕事をしたりしながら日々を過ごしていました。そんな中で妹が骨折のリハビリで上越の鍼灸院にお世話になる機会があり、それが鍼灸との最初の接点ですね。その時自分自身も心身ともに不調な感じが続いていたのでリフレッシュのために鍼灸院に通っているうちにピンとくるものがあり、鍼灸の道に進もうと専門学校で学ぶことにしたんです」

そんな中、福保さんに思いがけないトラブルが発生。「在学中にバイクで交通事故に遭ってしまって。結構派手な事故だったのですが、まさに九死に一生、奇跡的に左足の捻挫だけで済みました。とは言ってもなかなか捻挫の痛みが引かず、そこからメンタルもちょっと不調になってきて。やっぱり体の不調ってメンタルにも影響してくるんですね。そこである人に紹介されて、はり・きゅう鍼藺堂(はりいどう)の久津美先生の治療を受けたんです。施術を受けた初回でお腹が温まる実感があり、2、3回目で確かな効果を感じて。4週目には捻挫の痛みがすっかり引いていました。久津美先生の施術は皮膚に鍼を接触させて気を動かすという古典鍼灸術の手法で、五臓六腑にアプローチをして体と心のメンテナンスを図るという考え方なのですが、自分で効果を実感したこともありこれは自分のものにしたいと。学校の授業と並行して久津美先生に教えを乞うという日々を過ごしました」

「接触鍼(せっしょくしん)」という針を刺さない施術を実施。「針が怖いという人も安心して施術を受けられますよ(福保さん)」

 

子供におじいちゃんとおばあちゃんと過ごす生活を。そのためのUターン。

卒業後は燕市の鍼灸院に就職。定休日には引き続き久津美先生のもとにも通い、順調に経験とスキルを積み上げていった福保さんは就業から3年後に清里にUターン、開業に至ります。

「もちろん働いていた燕市での開業も選択肢にはありました。そして、上越の市街地も。実は上越の市街地で物件を探したのですがその時に条件のいいところが出てこなかったんです。そこで清里区へのUターンを検討し始めました。もちろん、実家がスポンサーになってくれるというところも大きいんですが、決め手は仕事の都合というよりは家族の将来を考えてなんです。開業のタイミングでは結婚して子供も生まれていて、子供たちにおじいちゃんおばあちゃんと一緒に過ごすという環境を提供したかったんですよね。自分自身がおじいちゃんおばあちゃんっ子だったこともあって」

とはいうものの、大きな市街地ではない農村での開業に不安はなかったのかと尋ねると頼もしい回答が。「うーん、技術がしっかりしていれば多少遠方からでもお客さまはついてくるかなと思っていて。事実、いまのお客さまは清里区内、上越市内、新井妙高がそれぞれ同じくらいの割合になっていて。医療のフィールドではありますが、ある意味で『ファン』を増やすことが大切なんじゃないかなと。自分のファンが増やせる場所ならきっとどこでもやっていけるだろうと。施術の方針として、『治す』ことを重要視して、お年寄りがどこかに自分の足で遊びに行けるような体のメンテナンスをしてあげるということを大切にしていて。そんなところが少しづつ浸透して支持されていっているのかも」

 

地域のつながりの中で生きる。その中での起業ということ。

現在では順調にファンを増やし、軌道に乗ってきた3年目。清里区での生活について改めて尋ねてみました。「戻ってくるまでは、清里が農村だという認識も全然なかったですね。帰ってきて、美味しい米、美味しい水の里だということに思い至った。そして、自分の生まれ育った場所だから、自分の知ってる人の中で生きる安心感というのはありますね。地域のつながりが濃厚で、そんな中で生きるということに心地よさを感じられるのならどんな形でも開業、起業のチャンスはあるのかもと思います」

福保さんの鍼灸院は、地域の健康を支える存在としてこれからも成長を続けることでしょう。終始柔らかく優しい語り口で丁寧にお話をしてくれた福保さん。そんな福保さんの優しさについて尋ねてみるとこんな答えが。

「私自身、『甘ちゃん』なんですよ。自分にも他人にも甘い。そんなところを『優しい』って言っていただけるならもうどうぞどうぞといった感じで(笑)」

うーん、人柄が滲み出ていますよね。ファンが多いのもうなづけます!

 

【はり・きゅう蓋世堂(かいせいどう)】
http://sun3.gmobb.jp/kaiseido/index.html