清里の農

保坂⼀⼋さんと、グリーンファーム清⾥のこと。

農業が抱える課題に対して、清⾥が⽰したひとつの解決策。農業公社とグリーンファーム清⾥について。

農業の現状において避けて通ることのできない、⾼齢化と⼈材不⾜、中⼭間地域にて特に顕著な耕作放棄地の問題。もちろん清⾥においてもこれらの問題は⼈ごとではありませんが、清⾥ではもう30年以上も前から、農作業受託の受け⽫としての清⾥村農業公社と実質的な農業経営を担うグリーンファーム清⾥が連携する形で、農地保全と採算の取れた経営の双⽅で地域の農業を未来へとつないでいく試みが⾏われています。

保坂⼀⼋さんと、グリーンファーム清⾥。

そしてそのキーパーソンとして名前が挙がるのがグリーンファーム清⾥の代表を務める保坂⼀⼋(ほさかかずはち)さん。春を⽬前に控えた3⽉のある⽇、ご⾃⾝のこと、グリーンファームのこと、そして清⾥の未来のこと、様々なお話をうかがってきました。

「⼦供の頃から牧場を作るのが夢で。⾼校の頃は学校を3週間サボってバイクで北海道を旅⾏したりと、畜産については熱を上げていましたね。あ、学校にはもちろんサボりがバレてこってり絞られましたよ(笑)」そう語る保坂さん。⾼校卒業後は北海道で畜産を学び、そのまま北海道庁に⼊庁。数年の社会⼈としての経験ののち、故郷の清⾥に戻ることになり、地域の農業が抱える⾼齢化や⼈材不⾜、耕作放棄地の問題に直⾯します。

「なんとかしなきゃいけない」そんな⼀⼼から、組織づくりを経てリーダーとして⽴ち上がる。

「『なんとかしなきゃいけない』、この思いだよね。公社を⽴ち上げて、そして公社では担えない部分はグリーンファーム清⾥でカバーする。モデルや前例があったわけでもいから企画⽴案、組織づくりの設計からもう本当に⼤変でした。ようやく組織の形が⾒えてきた時に、次の問題として『じゃあ、誰がやるか』ということになる。最初から積極的に⾃分がやろうというつもりではなかったけど、地域を守るためにはもう⾃分が⽴ちあがろうと(保坂さん)」

⼀度覚悟を決めてからは「地域を振り回すくらいの覚悟で(保坂さん)」奔⾛。少しづつ、でも着実に組織は成⻑していき、平成28年度には全国優良経営体表彰・法⼈経営体部⾨において農林⽔産⼤⾂賞を受賞するなど、全国的にも未来へとつながる農業のモデルケースとして注⽬を集めています。

清⾥⼀農場化計画、経営のこと、世代のこと、そして清⾥の未来のこと。

保坂さんが今後の清⾥の形として描いているのが清⾥⼀農場化計画。「全部で500haの⾯積がある清⾥の農場。それらのひとつひとつが融合して結びつきを持ちながら総合的な産業として組織化され、守っていけるような形になっていければと考えています(保坂さん)」

また、農業の未来のために、グリーンファーム清⾥の経営においても若い世代に責任や権限を持たせ、若⼿が出した具体的なアイデアを事業として実現させていく試みもあわせて⾏っています。「いわゆる『⽼害』にはなりたくない、そんなふうにずっと思っていましたので(笑)。次世代に活躍してもらって、ワインや⽇本酒の⽣産、そして野菜、⽶、⽜、ぶどうの⽣産から、ゆくゆくは『農家レストラン』みたいな形で、観光的な農業まで発展させていくことが地域振興という観点での⼤きな夢かなあと(保坂さん)」

若⼿に権限移譲しつつ、責任を付与し、ボトムアップ⽅式で事業を進めていくなんて聞くと、昨今の最先端の経営⽅針の話でもよく⽿にするようなある意味「今っぽい」組織マネジメント術とも⾔えるところ。そこで、「⼀般企業やIT企業の経営⼿腕とも通じるものがあるんじゃないか」と問いかけてみたところ、「そうかもしれないけれど、やはり農業というのは他の産業と違うところも⼤いにあると思うんです」という答えが。

「何より、⽣産と⽣活の場が⼀緒ということが⼤きい。特にここ清⾥では中⼭間地の圃場の担い⼿不⾜の問題もあり、経営という視点のベースには産業という⾯だけにとどまらない『地域政策』という側⾯があるということは必ずセットで考えなければならないと思います(保坂さん)」

グリーンファーム清⾥という「経営体」としてできることと、これからの清⾥のあり⽅。次世代へどう未来を託していくか、まだまだ保坂さんの頭の中にはアイデアが多くありそうです。

「リカードというイギリスの経済学者が『国際分業』という経済理論を唱えたりもしているけど、起業経営の⾏き着く先は究極的には世界⼀を⽬指すこと。資本主義であればそれは当然の流れ。でも、農業は資本主義の流れのなかでも『共⽣』の発想がないと成り⽴ちません。『農業に⼀⼈勝ちはない』、今までの経験から本当にそう思います。みんなで、清⾥の未来を作っていかないとね」

⽯川で被災した⽜を引き取ったり、北海道視察の時にワンちゃんを連れてきたりとなかなか⾃由奔放でアクティブな⼀⾯も覗かせる保坂さん。⾼校⽣の頃バイクで北海道を⾛っていたころと同じ⽬には、今後の清⾥はどう⾒えているのでしょう(了)。